そこにあると知っていてもどんなに長く住んでいても、行こうと思わなければ行けない場所がある。そんな気になるあそこに入ってみたいシリーズ。今回もピーナゴが突撃してきました。
芝浦水再生センターのあるところ
ピーナゴも散歩で度々訪れる芝浦中央公園は、港区随一の広さを誇り、バラ園、ドッグラン、バスケットゴール、アスレチック広場、芝生広場、ビオトープなど施設も充実している芝浦住民の憩いの場です。
この公園へ行くには、北からは芝浦橋からゆるやかな坂を上り、南からは品川シーズンテラスのエスカレーターを使うのが一般的かと思います。そう、芝浦中央公園は、地上からちょっと高いところにあるのです。
芝浦中央公園の下には、東京都下水道局芝浦水再生センターがあります。名前どおり水を再生するところです。夏場には風向きに寄って生暖かい臭いがするのに気づく人がいるかもしれません。
下水道局のキャンペーンに遭遇
10月27日の芝浦運河まつりで、東京都下水道局が「油・断・快適!下水道」キャンペーン 下水道に油を流さないで!の強化月間として出展していて、トートバックを貰いました。その中には、下水道の仕組みや本キャンペーンのパンフレットの他に、ボールペン、キッチンペーパー、簡易トイレ等たくさんの実用的なオリジナルグッズが入っていました。
トートバックを受け取った際、スタッフの方から見学予約がwebでできると教えてもらいました。
どんなに芝浦中央公園に通っても、その下で何が行われているのか知らないまま。生活に欠かせない重要な施設であることはわかってるけど、公園からはよく見えないし、webサイトの情報だけじゃ物足りない。そんな思いをずっと抱いていましたから、すかさず予約することにしました。
施設見学を予約
水再生センターは、土曜、日曜、祝日、年末年始を除いて施設を見学することができます。
電話番号:03-3241-0944
web予約:東京都下水道局水再生センター施設見学予約受付サイト
受付時間 9時~17時(平日のみ)
ピーナゴはweb予約から申し込みました。予約完了メールを受信した直後に担当者から予約確認の電話がかかってきました。ピーナゴ、電話に緊張する質なので飛び上がるくらいビックリしました。
なお、予約は午前・午後の各1組となっているので、申込みがあると参加が一人だとしてもその回は埋まり、他の参加希望者を追加するようなことはしていないそうです。できるだけ人を集めてから申し込みすることをお勧めします。
さもないと、ピーナゴのように、マンツーマンどころか2対1になりますよー。
参加人数の変更やキャンセルは電話で受け付けています。
見学の注意事項
施設内見学では段差や足元が平坦でない場所があります。ハイヒールや下駄などの不安定なもの、サンダルなどの素足が露出するものは避けて、歩きやすい履物・服装で臨みましょう。
見学作用の駐車場はありません。公共交通機関の利用がおすすめです。
見学の集合場所
施設見学は芝浦水再生センターの管理事務所で行われます。旧海岸通りの高浜橋交差点が目印です。再生センター正門に向かって右にある白い建物がそれです。
〒108-0075 港区港南1-2-28(リンクはgoogleMap)
電話:03-3472-6411
JR「品川」駅東口(港南口)または「田町」駅東口から徒歩15分
JR「品川」駅東口(港南口)から都営バス「東京タワー」または
JR「田町駅東口」行、「水道局管理事務所前」下車徒歩1分
今回、正門前で案内スタッフの方が待っていてくださいましたので、説明会場への移動もスムーズでした。
見学
以下のような内容で進みました。
- 見学者室でDVD視聴と案内スタッフによる説明(約1時間)
- 管理事務所屋上から施設全体の眺望(約10分)
- 沈殿池見学(約5分)
- ポンプ室見学(約5分)
- 第一沈殿池パネル説明(約5分)
- 反応槽見学(約10分)
- 第二沈殿池見学(約10分)
DVD視聴と案内スタッフによる説明
最初に管理事務所2階の見学室に通されました。席には子供用、大人用の見学者用パンプレットをはじめ、トートバック、海洋プラスチックを回収して作られたボールペン、ジップ付き保存パック、スクレーパー、ウェットティッシュ、キッチンペーパー、国産間伐材を使った定規などオリジナルグッズをたくさん頂きました。
最初にDVDによる視聴がありました。内容は、下水道の役割、下水道のしくみ、芝浦水再生センターの歴史と役割、水再生センターのしくみ、震災対策、地球環境との関わりなど充実したものでした。
施設点検のための計画停電でDVD視聴が中断するハプニングがありましたが、なにせ2対1のゆとりある見学でしたので、口頭での説明や私からの質問に答えていただいている間に、復旧しました。
たくさん質問したいことがあったのですが、予定の1時間が過ぎたので施設見学に移りました。
管理事務所屋上
施設見学の最初は管理施設棟の屋上に上りました。施設全体を眺め、説明パネルと見比べました。
双眼鏡持って行けばよかったなー。
芝浦水再生センター管理事務所屋上から東の景色
沈砂池
沈砂池は下水から土砂類や大きなゴミを取り除く施設です。次の工程であるポンプが詰まらないようにしています。全て覆われているので水面は見えませんが、深さが20メートルもあるそうです。
ここは下水が直接流れてくる場所です。本来ならひどい悪臭がして当然の場所ですが、臭いが気になるようなことはありませんでした。見学日はちょうど工事が入っていたせいで、塗装溶剤の臭いが漂っていましたが。
沈砂池は全て密閉されていて、ガスは全てダストに回収されて活性炭で脱臭されて放出するしくみになっているそうです。
下は、東京都のYoutube動画①沈砂池からキャプチャしたものです。
見学通路も非常に歩きやすく整備されていて、社会見学施設としてとても充実した取り組みをしているのがよくわかりました。
ポンプ室
写真は高段汚水ポンプの7台で、この他に低段汚水ポンプが4台あります。下水は傾斜による自然流下で施設に流れ込み、沈砂池は地下20メートルの深さにあります。それを地上にある第一沈殿池に送るために組み上げています。
写真で見えている部分は電動機、ポンプ本体は地下で動いています。
通常稼働しているのは1台から2台で、台風などの大雨の際には全稼働することがあるという話でした。全て動かすと25メートルプールを9秒で空にできるとか。消費電力量も凄まじいのでしょう。
それにしても清掃整頓や安全管理が行き届いてきれいです。職員さんの徹底した仕事ぶりが見て取れて、気持ちよいですね。
第一沈殿池パネル説明
第一沈殿池は芝浦中央公園の北側スロープ周辺にありますが、施設は全て地下にあり地上から見ることはできません。今回の見学ルートからは駐車場を超えて行く必要があり、車の危険を避けるため、管理事務所に設置してあるパネルを前にしての説明だけになりました。
第一沈殿池は沈みやすい汚れを沈殿させる施設です。9つの池は上段と下段の二層構造になっていて、長い距離にゆっくり水を通すことで2から3時間かけて小さなゴミや土砂を沈殿させています。
反応槽への移動
管理事務棟から出て、反応槽のある場所に移動します。高浜橋交差点を通る時によく見る景色です。
第一沈殿池と反応槽の境目にある通路です。右の白い高架は芝浦中央公園のバラ園がある道路、この一番奥が連絡橋です。よく見る景色を逆方向から眺められて、テンションが一層上がりました。
反応槽
いよいよ芝浦水再生センターの中心で最も広くて目立っている施設、反応槽です。
反応槽では、クマムシやアメーバなどの微生物が含まれる活性汚泥を使って6から8時間かけて汚れを分解します。巨大な反応槽の蓋がゆっくりと開いていくのが迫力ありました。ちなみに、ここでも臭いは全く気になりませんでした。
なお、東京都のYoutube動画④反応槽によると、1ミリリットルに細菌類が数億匹、原生動物と後生動物が2万匹含まれるんだとか。とてつもない数の微生物がせっせと汚泥を分解してくれているわけです。
クマムシたち、ありがとー!
第二沈殿池
第二沈殿池では最終的にきれいになった水と活性汚泥を3から4時間かけて分離します。ここも上層と下層の二層構造になって距離を稼いでいます。
沈殿物と分離された上澄みは塩素で消毒された後、新港南橋の下から芝浦運河に放出されます。新港南橋の下に水鳥やボラの群れが多いのは、芝浦水再生センターの処理水が理由だったんですね。
この日とても天気がよくて、第二沈殿池が野鳥の楽園になっていました。
大田区の野鳥公園より数も種類も多いぞ!
双眼鏡を持ってこなかったことをまたもや後悔しました。
ぱっと見ただけですが、カルガモ、マガモ、ホシハジロ、キンクロハジロがいました。たぶん、もっといた。
あぁ、ここで野鳥観察したら楽しいだろうなー。
野鳥に気を取られて、第二沈殿池にいた時の記憶が薄くなりました。
感想
今回、芝浦水再生センターの見学を通して、都市生活の裏側にある重要なインフラの存在と、それを支える人々の努力を知ることができました。
下水には雨水も含まれます。近年増加しているゲリラ豪雨に対応するために、この施設が果たしている役割は非常に大きいと実感しました。特に、品川シーズンテラスの下が雨水貯留池だというのは今回初めて知りました。下水を水再生センターに送るため、傾斜や、低地で使用されるポンプ施設(芝浦アイランドにある青いキラキラした建物だ!)によって、都心の広いエリアから下水を効率的に集め、24時間365日休まず処理しているそうです。
水再生の仕組み自体の重要性は言うまでもありませんが、特に印象的だったのは、こうした施設が都心の機能を維持し、防災都市作りに貢献している点です。日常生活では、ひとりでも生きていけるように錯覚するほど都市の便利さに頼っていますが、実際には多くの人々の労働と努力がその裏にあることを改めて認識しました。
これほど重要な水循環を支える施設がこの芝浦にあることで、都市インフラの重要性を学ぶ機会を得、この運河の街芝浦への感謝と理解が深まりました。水再生センターがある芝浦の住民として、今後ますます自分ができる最善の方法で汚水を減らす努力をしたいと思います。
最後に、芝浦水再生センターの見学にあたり、2対1の贅沢な案内をしてくださった職員OBの方々に深く感謝いたします。
その他
ピーナゴが特に面白く思った部分をメモ代わりにパンフレットから転記します。
「下水道のしくみ」から水再生センター部分だけ。
芝浦水再生センターの施設平面図です。
芝浦中央公園や品川シーズンテラスの下に何の施設があるのかよくわかりました。
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